イベントレポート

第1回さくらの夕べ~さくらのVPS開発者が語るここだけの話~

 当社ユーザーの皆さまとの交流会「第1回さくらの夕べ」が5月26日に開催されました。当日は多くのユーザーにお越しいただき、3時間ほどの間に笑いあり、社外秘情報あり(汗)と、非常に濃密な時間を過ごせました。ここでは、当日の模様をほんの少しご紹介します。

会場ははやくも満席です

※会場ははやくも満席です

田中「なぜVPSサービス展開に至ったのか」

 50名超の当社ユーザーを前に、オープニングトークはもちろん、当社代表の田中邦裕が担当します。「2009年の5月ころ、私は『VPSサービスは劣化専用サーバだ』と言っていました。しかし、2010年9月からVPSサービスを開始。1年数カ月で方針転換です」と田中は当時を回想しながらプレゼンを進めます。


VPSは作りたくない…と言っていたのに、、、

※VPSは作りたくない…と言っていたのに、、、

作りました!

※作りました!

 ただし、この話には田中の真意が隠されています。当初、仮想化技術を過大評価しすぎて安易にVPSサービスに走ってはいけないという考え方がありました。Linode.comのような海外のVPSサースに注目するユーザーの動向なども承知していましたが、とりわけ当社はサーバのパフォーマンスの事を考え、物理サーバ(専用サーバ)にこだわりを持っており、こちらを突き詰めていくことが重要だと考えていました。
 しかし田中は仮想サーバの利便性を実感する事態に遭遇します。それは田中が個人的に運営しているブログに大量のアクセスが集中したことでした。

「とあるさくらのジェネレータ」

※もはや説明不要?の「とあるさくらのジェネレータ」

 「通常よりも少し多いぐらいのアクセスなら集中しても問題なかったのですが、その時は一定のレベルを超えていました。そこで海外の仮想サーバ、まぁAmazonさん(Amazon EC2)なのですが(笑)、利用してみると意外に使える。『仮想サーバっていいな』ということになったわけです」(田中)
 田中自身、仮想化技術の便利さには素直に評価をした、ということなのですが、実は、さくらインターネットの開発現場では、既に仮想化技術(KVM)の利用が始まっていました。田中に隠れてひっそりと現場はKVMを学んでゆく、その様子は「まるで隠れキリシタンのよう」だったそうです(笑)。ということで、現実に稼動しているサービスへの仮想化技術の活用実績は既にかなり積み上がっていたのです。
 かくして、さくらのVPSが開始されたわけですが、田中は次のように話します。
「5月現在で試用期間中の方を含め15000件の申し込みをいただいています。これは大変うれしいし、ありがたいことだと思います。これからも当社ならではのVPSサービスを展開していきたい。それは低コストで性能が良く、安定したサービスといえると思います。一方でさくらのVPSでは、あえて多くの機能や拡張性には目をつぶり、コストを限界まで抑えています。」

さくらのVPSは機能と拡張性を見送り、性能、安定性と低コストを実現しました

※さくらのVPSは機能と拡張性を見送り、性能、安定性と低コストを実現しました

 最後に「機能や拡張性については後のIaaSサービスで実現したいと思っています。今後もこうしたコンセプトのもとでサービス拡充を続けていきたいと思います」との田中からのコメントがあり、セッションが終了しました。



さくらが取り組むVPSの高い安定性の維持

続いて登場したのは、開発第1チームチームマネジャーの加藤直人と新規事業室の横田真俊です。横田が質問者となり、「さくらのVPS」の開発責任者である加藤の話を聞きます。

おかげさまでさくらのVPS、右肩上がりです!

※おかげさまでさくらのVPS、右肩上がりです!

 スタートアップメニューの512Mプランの他、上位プランとなる1G、1.5G、4G、8Gの誕生について、また特に1.5Gプランと4Gプランに人気が集まっている状況について横田が質問すると、加藤は次のように答えました。
 「プランの拡充は、まぁ、経営からの要請でもあったわけですが(笑)、上位プランのバリエーションは、性能と価格のバランスがいいところで設定しました。これがお客様からも多くの支持をいただけるということは、正直、大変うれしいです。上位プランの人気の高さは今後も続けばいいなと期待しています。1.5Gプランと4Gプランが人気?うーん、逆に私が教えていただきたいくらい(笑)」

「上位プラン利用者は?」との質問に応える会場の皆さま。約半数くらいでした

※「上位プラン利用者は?」との質問に応える会場の皆さま。約半数くらいでした

 次に、なぜKVMを採用したかという質問が横田から出ると、加藤は「XenではFreeBSDが動かないなど、結果的に当社のやりたいVPSサービスは実現できないことが分かりました。VMwareは無償版も出ていますが、それでは同様に当社の要望する機能は出せない。有償版ではコストに影響してしまいます。そこでKVMを使ってみるとスムーズに行く。いろいろと試行錯誤を重ねた上での結論です」と明かします。加藤によると、「物理サーバを目の前で扱っているかのように使えるVPSサービス」というのもこだわりのひとつだったようです。
 次のスライドに移る前に、横田から参加者に対して「ここからはちょっと撮影はご遠慮いただいて…」というお願いがあった上で、【社外秘】と書かれた各プランのスペックの表が出されました(ここで多くのシャッター音が…。皆さんの記憶の中にしまっておいてくださいね。)今回、はじめて明かされたのは、各プランの物理サーバスペック、CPU、1サーバあたりVM収容数などでした。これを見た横田が「1サーバあたりのVM収容数に余裕が持たれているように感じる。もっと詰め込めたのでは?」という質問をぶつけましたが、加藤はそれに対し「オーバーコミットはしたくないと思いました。現状の共有数が最もパフォーマンスが良いということが分かっています」と回答、安定性重視のポリシーを強調しました。

*パフォーマンスについては田中のブログ「さくらインターネット創業日記」でも言及されておりますので、こちらもご覧ください。


【さくらインターネット創業日記】格安の低価格VPSを比較する
 続いてのスライドでは、サポートOSのインストール回数について紹介がありました。現在OSはCentOSがデフォルトになっており、したがってインストール回数ももっとも多いのですが、その他のOSについてはUbuntuが多いことが紹介されました。

イベントレポート01

※本当に一番多いのはCentOSの再インストールだそうです(横田談)

 一方、LinodeのOSシェアはUbuntuが48%、Debianが24%、CentOSが16%であることが紹介されましたが、加藤は「(この流れは)日本においては当面はあまり変わらない考えられないのではないか」と分析していました。
 続いて、さくらのVPSユーザーの利用Webブラウザは、Firefoxが約4割でChromeが約3割となっていて、IEは実に2割程度であることも紹介されました。さらにiOSを利用している人も予想以上に多いようです。実際参加者の中でもiPhone、iPadなどからコントロールパネルを操作する人が多いのでは?ということで参加者にそうした活用をしている人がどれだけいるかということを確認すると、15名程度手が上がりました(代表の田中もその一人でしたが)。



問題解決に向けての取り組みとこれからのサービス拡充

 続いて、参加者からの質問の時間です。さまざまな活用をしているユーザーから、まず、アクセススピードが落ちる現象について指摘がありました。加藤はこの問題について、実際にクレームに繋がってしまった事実を紹介しました。「原因がTSO(TCP Segmentation Offload)の問題だと分かるまで時間がかかってしまいました。仮想OS上でTSOが走るとアクセススピードが落ちてしまうのです。」(加藤)もちろんこの問題はすでに解決済みですのでご安心ください。
(補足 :さくらのVPS 回線遅延に関する情報のお知らせ)
 また、「デフォルトがrootパスワードログインで不安だ」という意見もありましたが、最初の状態ではサーバの電源がオフ状態なので、いきなりクラックされることは無い。シリアルコンソールなどからのログインも試していただきたい」との回答がありました。さらに、お試し期間から正式利用への移行がいつなのかが分からないといった質問(※)や、お試し期間から正式利用に移行された場合の通知がない件については、今後改善に向けて進めていくことが話されました。

※ こちらに関しては本登録のお手続きから数時間以内に制限を解除するよう改善しました。

 「お試し期間中に帯域計測したい」という要望については田中から「お試し期間での帯域制限はサーバ側からのアップロードで2Mbpsだが、実はダウンロードでの制限はなく700Mbpsほどになっている。是非色々試して欲しい」とのコメントが寄せられました。ちなみに、誤って入金遅延が生じてしまった場合のデータの保存期間については、会場にこっそり遊びに来ていたもう一人の開発マネージャーの後藤より「保障はできないが、3日程度なら大丈夫」という裏事実?も紹介されました(あくまでも目安です。)
 質問タイムが終わった後、加藤からさくらのVPSの今後について次のような話が出ました。「今後はファイアウォールの拡充、IPv6への対応、さらにDebianやFedoraも新しいバージョンが出ているので、カスタムOSのバージョンアップも進めていきます。それからVMイメージバンク(VMイメージの保存ができるストレージ機能)などのバックアップサービスの新設などを順次進めていく計画です。今後もより便利でシンプルなサービスを目指していきます」
 さて、そろそろ懇親会かなというところで、どこからか「さくらのクラウドはどうなっていますか?」という声が上がりました。急きょ、田中による開発途中のさくらのクラウド(仮)のデモンストレーションが開始されます。「まだα1版です」と断りが入りながらOSやスペックを選択しながら構築する様が展開されました。さくらのクラウドは、VMイメージバンクを通じてVPSサービスとも連携できるようにしたいと考えており、されるように開発しており、年末までにはサービスインの予定、と田中によって紹介されました。なお、当日のアンケートでも当社のクラウドサービスには多くの期待を寄せていただいておりました。「さくらのクラウド」についてももちろん「さくらの夕べ」にて情報提供を致します。しばしお待ちください!
 これまでのハウジング、専用サーバ、レンタルサーバのサービスに加え、さくらのVPS、さくらのクラウドと、サービスラインナップはどんどん広がっています。厳しく、そして深い愛に満ちあふれたユーザーの皆さまの意見を取り入れながら、これからもどこにも負けない充実したサービスを提供していきたい、スタッフ一同、改めてそんな決意をした一夜でした。参加していただいた皆さま、本当にありがとうございました。


懇親会まで非常に多くの皆さまに残っていただきました

※懇親会まで非常に多くの皆さまに残っていただきました

田中より終会のご挨拶

※田中より終会のご挨拶

加藤さん、横田さん、お疲れさまでした!

※加藤さん、横田さん、お疲れさまでした!

ほっと一息、さくら社員

※ほっと一息、さくら社員

アンケートもたくさん書いていただきました。次の夕べのアイデアはここから?

※アンケートもたくさん書いていただきました。次の夕べのアイデアはここから?

@sakura_-prの中の人もグビッといっています

Twitter広報アカウントの中の人もグビッといっています

ビール持ち帰りはひとり1本まで!

※ビール持ち帰りはひとり1本まで!

 最後に、今回の「第一回さくらの夕べ」を取り上げていただいております、各種記事を紹介致します。もっとこんな記事もあるよ、というものがあればぜひさくらインターネット広報担当までお寄せくださいませ。

「さくらのVPS」ユーザーイベントを開催?開発コンセプトは、性能・安定性・低コスト
► INTERNET Watch

田中社長がやっぱり暴走!さくらVPSのゆうべに潜入
► ASCII.jp

第1回さくらの夕べに参加してきたので、ツダったお!
► ともちゃ日記

第1回さくらの夕べに参加してきた #skrug
► てるブログ

「第1回さくらの夕べ ?さくらのVPS開発者が語るここだけの話?」に行きたかった
► 予定は未定であって決定ではない

「さくらの夕べ」
► 元学生起業家の休眠事業立て直し

「第1回さくらの夕べ」
► Togetter

さくらインターネット 企画部 広報宣伝チーム 櫻井 裕